カタール・ワールドカップに臨む26人の日本代表メンバーが発表された。会見に臨み一人ひとりの名を読み上げた森保一監督の表情からうかがえるように、選出は非常に難しい作業だったに違いない。この26人の決定は、日本代表の行く末をどのように定めていくのか――。ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が、徹底的に語り合った。

■これまでの五輪出場選手のパターン

――今回のメンバーで、何か気になった点はありますか。

大住「大迫勇也や原口元気が入らなかった驚きは脇に置いておいて、今さらながらに驚いたのは、直前のオリンピックに出た選手がこんなに多くワールドカップに出るのは初めてだということ」

後藤「そうそう!」

大住「オーバーエイジで出た3人を除いても、東京オリンピックに出た選手が10人もいる。ということは、非常に若いチームで、次のワールドカップでも十分20代という選手たちがそろっているということなんだよね。その10人の他にも、同年代の伊藤洋輝が新たに入っているし」

後藤「オリンピックチームとフル代表の監督を同じ人がやった成果だよね」

大住「若いといっても、国際経験がないわけじゃなくて、オリンピックの強化やその後にフル代表で経験を積んでいる。それから大半、というよりも相馬勇紀以外の全員がヨーロッパでプレーしている。若いけど戦力になるし、次のワールドカップも楽しみな選手たちなんだよね。これは今回の大きな特徴だよ」

後藤「これまでもよく、オリンピック経由で次のワールドカップに行くんだと言っていたけど、今回は掛け声だけじゃなくて本当にそうなったんだよね」

大住「多かったのは、オリンピックの6年後に入るパターンなんだよ。北京五輪に出た選手の多くがその後、フル代表に入っていったけど、活躍したのは6年後なんだよね」

後藤「幸いなことに、スペインもフル代表クラスの選手を東京五輪に出してくれたから、オリンピックでのスペイン戦が今回活きてくる。スペインには女子の代表チームが最近2回負けているから、因縁の相手だね。来年の女子ワールドカップでもスペインと対戦するんだけど」

■日本人兼任監督の価値

――何となくベテランが目立つ印象でしたが、確かに若いチームですね。

後藤「若いよ! 素晴らしいよ、本当に」

大住「鎌田大地や守田英正だって、五輪世代よりちょっと年齢が上なだけだもんね」

後藤「若いと言っても十分経験を積んでいるし」

大住「GKはいないけど、五輪に出た今回のメンバーのうちの13人だけで、心配のないチームができる。森保一監督は頑固にベテランを使い続けるというイメージもあるんだけど、実際にはこんなに若いチームにしている」

後藤「将来につながるチームができたというのは、単に五輪との兼任だったからというだけじゃなくて、日本人監督だったというのが大きいよね。だから、どの選手が入った、外れたというのはあるけど、全体としては素晴らしいチームづくりだったんだよ」

大住「今の日本サッカー界には大枠でとらえても40人、50人という良い選手がいるよ。誰が選ばれても、そこそこやれると思う。だけど、一時期の本田圭佑や香川真司のような、突出した選手はいないかな。替えが効かない選手は、もちろんいるけどさ」

■ベースアップされている日本代表

――確かに、昔の中田英寿のような存在はいないかもしれませんね。

後藤「当時の中田や本田が今いたとして、今のチームで彼らが突出した選手になるかというと、そうではないよね。今では、普通にヨーロッパでやっている選手がいっぱいいるわけだからさ。ブンデスリーガで点を取りまくっている選手や、チャンピオンズリーグで3試合連続で点を取っても普通のことだからね。10年前はチャンピオンズリーグに出たらすごいことだったけど、今では当たり前になっているんだよね。スコットランドでたくさん点を取っても、ワールドカップメンバーから落とされちゃうんだから」

大住「旗手怜央だって、セルティックの大スターだしね」

後藤「日本のサッカーは、それくらいのレベルになっているんだよ。チャンピオンズリーグで勝てるチームの一員になるくらいじゃないと、残っていけない」

大住「日本のサッカーは全体のレベルが上がっているんだろうけど、本当にワールドクラスという選手は出てこないよね」

後藤「次の4年後、8年後には、チャンピオンズリーグで優勝するチームで活躍する選手が出てくるかもしれない。そうなったら、本気でワールドカップ優勝を目指せるという話になるよ。各国のリーグで上位を争うチームに、日本人選手がたくさんいるわけだからね。だって、プレミアリーグ首位のチームの選手が日本代表にいるんだよ!」