森保一監督が率いるサッカー日本代表は、11月17日(日本時間)にカナダ代表と対戦した。

前半8分に、柴崎岳の浮き球パスに反応した相馬勇紀が相手最終ラインの背後に走り、先制ゴールを挙げたものの、同21分にカナダ代表のコーナーキックからDFスティーブン・ビトーリアにゴールを奪われ、試合は振り出しに。後半アディショナルタイムには途中出場のDF山根視来がリッチー・ラリアを自陣ペナルティエリア内で倒してしまい、これによるPKをルーカス・カバリーニに物にされた。最終スコア1-2で、日本代表がカナダ代表に敗れている。

カタール・ワールドカップ前最後の強化試合で見えた森保ジャパンの強みや問題点とは何か。今回はこの点について解説する。


守備の約束事の明確化は急務。カナダ戦で見えた森保ジャパンの弱点【試合分析】
日本代表vsカナダ代表、スターティングメンバー

随所に見られた2ボランチのチャンスメイク

日本代表のスターティングメンバーのなかで気を吐いたのは、柴崎と田中碧の2ボランチだった。

前者は相馬のゴールをアシストしただけでなく、後半44分にもセンターサークル付近からスルーパスを繰り出し、山根の決定機を創出。適宜最終ラインへ降り、自軍のビルドアップを下支えした。

田中も柴崎と同じく、[4-2-3-1]の布陣の2センターバック間や、センターバックとサイドバックの間に降り、攻撃の起点に。

守備の約束事の明確化は急務。カナダ戦で見えた森保ジャパンの弱点【試合分析】
田中碧 写真:Getty Images

トップ下の南野拓実から相馬へパスが通りかけた前半4分には、センターバックの板倉滉と右サイドバックの酒井宏樹の間に田中が降り、ボールを保持。これにより基本布陣[4-4-2]のカナダ代表の左サイドハーフ、ジュニオール・ホイレットが酒井のマークに付きづらくなった。田中から酒井、南野の順でパスが繋がり、前述の攻撃に至っている。

前半19分にも、板倉と谷口彰悟の2センターバック間に田中が降り、ワンタッチパスを繰り出したことで、カナダ代表のハイプレスを回避。この直後に南野のパスを受けた左サイドハーフの久保建英がペナルティエリアへ侵入し、惜しいシュートを放った。

前半に自陣での危険なボールロストが一度見受けられたが、この試合における田中のパフォーマンスは及第点と言えるだろう。遠藤航と守田英正を脳震盪や負傷で欠いたなかで、田中がビルドアップの起点として機能したことは、森保ジャパンにとって明るい材料だ。

守備の約束事の明確化は急務。カナダ戦で見えた森保ジャパンの弱点【試合分析】
後半開始時の両軍のメンバー

早急に改善すべき“守備の問題点”とは

日本代表の自陣からのパスワークが安定していた一方で、緻密さに欠けるハイプレスも散見された。

問題が起きたのは、カナダ代表の2ボランチの一角アティバ・ハッチンソンが最終ラインに降りる、もしくは左サイドバックのサム・アデクグベが敵陣に上がり、変則3バックを形成してビルドアップを行った場面だ。

特に後半はカナダ代表の変則3バックに対し、日本代表が[4-4-2]の守備隊形のままハイプレスを仕掛けようとするシーンがあり、敵陣ペナルティエリアの手前で2対3の数的不利が発生。後半より左サイドハーフを務めた相馬が、センターバックのビトーリアの右隣に降りるハッチンソンや、時折変則3バックの右を務めたアリスター・ジョンストンと対面したが、寄せ始めのタイミングが遅い場面がしばしば。9月のアメリカ代表戦(23日)やエクアドル代表戦(27日)と同じく、3バックでビルドアップを行うチームへの対策を、日本代表の選手間で共有しきれなかったがゆえに起きた現象と言えるだろう。

ハイプレスの際に自チームの布陣をどのように変化させ、相手の変則3バックを誰が捕捉するのか。森保監督を含む“サムライブルー”は、この点を明確にしたうえでカタールW杯グループステージ第1節(ドイツ代表戦)に臨む必要がある。相手の隊形変化に対応しきれないのであれば、[4-4-2]の布陣のまま撤退し、自陣ペナルティエリア手前の封鎖に徹するのが得策だろう。相手の出方に応じたハイプレスと自陣撤退守備の使い分けも、日本代表がグループステージ突破に向けて突き詰めるべき課題だ。

守備の約束事の明確化は急務。カナダ戦で見えた森保ジャパンの弱点【試合分析】
日本代表 DF谷口彰悟 写真:Getty Images

また、この試合の終盤に敷いた[3-4-2-1](自陣撤退時[5-4-1])の布陣による守備も、危なげなかったとは言い難い。3バックの右を務めた谷口が、後半アディショナルタイムに右サイドへ飛び出して守備を行ったものの、ラリアからボールを奪えず。この直後に谷口の背後を突いたラリアがペナルティエリアに侵入し、山根のファウルを誘っている。

3センターバックで中央を堅めるのがこの布陣の要諦である以上、この3人がサイドに釣り出されるのは避けなければならない。守備固めとしてこの布陣を敷く公算が大きいが、疲労がたまるであろう試合終盤でも集中力を保ち、今回のような判断ミスを無くせるか。日本代表戦士たちの奮起や、カタールW杯での躍動に期待したい。