[カタール・ワールドカップ・グループステージ第2戦]日本 0-1 コスタリカ/11月27日/アフマド・ビン・アリ・スタジアム
日本代表はグループステージ初戦でドイツに2-1の勝利を収めたが、コスタリカに0-1で敗れて、“勝点3”のまま、スペイン戦を迎えることになった。
終盤の失点がどうしても指摘されるが、5バックで守備を固めるコスタリカに対して、前半からあまりアグレッシブに行けなかったことが、勝機に結び付けられなかった要因だろう。
ただ、森保一監督は手をこまねいていたわけではない。35分過ぎに3バック(自陣の守備時は5バック)にして、ホエル・キャンベルとブライアン・オビエドが狙ってくる右サイドの守備をケアしながら、同時に山根視来が高い位置で起点になれるように修正した。同時に後半に向けて、伊藤洋輝と浅野拓磨を後半から出すためにアップさせている。
そして後半から2人が入ったが、伊藤のポジションが左サイドバック気味だったことに気付いた。伊藤に聞くと「後半の立ち上がりは4枚気味に回して外に出ることはありましたけど、内側も上手く取れていた場面もあったし、中に入ってワンツーでゴール前に侵入できた場面もあった」と答えてくれた。
3バックの4枚回し、つまりはサガン鳥栖がやっているような可変の“3.5バック”で、相馬勇紀を高い位置に張らせながら、浅野拓磨と縦の2トップ気味になった鎌田大地とトライアングルのような関係を作る。そこで生じた縦のスペースに、ボランチの守田英正も入り込んでいく形から日本のラッシュが生まれた。
その一方で右サイドは堂安律と山根の縦ラインに戻る形となったが、コスタリカのディフェンスはしばらく混乱している。ただ、そこからコスタリカは5ー4ー1の中でもマークを明確にして、日本の“3.5バック”に対応したので、55分前後には落ち着いてしまったが、そこから森保監督は「勝負のカード」である三笘薫を投入した。
そこで筆者の見解からすると、少し残念だったのが代わりに山根を下げたことだ。入る時に三笘は3本の指をピッチの選手たちに伝えているので、改めて3バックを明確にしたと思われる。三笘の投入に伴い、相馬が右に回ったのだが、そのまま“4枚回し”にすると相馬が事実上の右サイドバックになり、攻撃位置が低くなること、さらに守備のリスクも生じてしまう。
確かにコスタリカは“4枚回し”に対応してきてはいたが、三笘ありきなら状況が変わっていたのではないか。三笘を上手く活かせなかったという意味で批判の声があがる伊藤も、“4枚回し”の中で三笘との縦関係ならば、代表チームでの攻撃イメージは付きやすいし、シンプルに縦パスを付けやすい。
もう1つ、明確な3バックに戻したデメリットとして、サイドの2人を高い位置に上げるために、ボランチがワイドにサポートに入らないと行けなくなる。そうなると、もう1人のボランチが積極的な攻撃参加ができないのだ。
“4枚回し”でも必要に応じてボランチが後ろに落ちるなど役割はあるが、コスタリカは前から追える選手が1枚だけなので、その必要はなかった。そのため1人のボランチを残して、もう1人が前に出て行きやすい。山根を残したまま三笘を入れるなら、堂安か相馬を代えるということになるが、もう少し引っ張ってほしいプランだった。
森保監督はさらに伊東純也を入れて縦の推進力を出す構成にしたが、ボランチがバランスを取る分、コスタリカ側には分かりやすい攻撃になってしまった。失点後も5枚目のカードとして南野拓実を投入したが、それならば鎌田を1つ落として中盤に“発射台”を作るべきだった。
コスタリカは堅守速攻を崩さなかったが、勝点3が必要な状況で、日本の隙を狙っていた。そこで確実にクロージングできるなら良いが、時間が経てば経つほど、危ない状況になるのは森保監督も想定していたはず。
勝点3を取りには行くが、最悪スコアレスドローでも、という腹積りが、本当の意味での攻勢がかからなかった要因かもしれない。だが決して無策ではなかったなかで、もう1つ突き詰められたら、終盤になる前に勝機を見出せたのではないか。
取材・文●河治良幸
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