自己犠牲とカウンター。カタール・ワールドカップでの日本代表の強みを言葉で表すなら、こうなるだろうか。前線の選手もチームのために泥臭い仕事を厭わず、三笘や伊東を起点とした速攻でゴールを狙う。勤勉と言われる日本人の特徴を活かしたスタイルであり、これぞJFAが掲げる「ジャパンズウェイ」なのではないかと勝手ながら思った。

 ひたすらボールを追っかけ、途中交代しても文句ひとつ言わない前田がその象徴で、攻撃以上に守備に奔走しながらも最後まで戦い抜く伊東も“ジャパンズウェイの体現者”と言えそうだ。ある意味、今回の日本代表で最もクオリティの高い仕事をしながらスタメン出場が一度もなかった三笘は、自己犠牲のシンボルだったのかもしれない。

 最もそれらが悪いではなく、むしろそうやってチームとして成り立っていたからこそドイツやスペインを撃破し、ベスト16にたどり着けたのだろう。しかし、クロアチア戦で限界を露呈したのも事実だ。正直、試合内容は互角。決勝トーナメントという痺れる舞台で前回大会のファイナリストと渡り合える力を示したのだから、あとはPK戦で運を手繰り寄せればという見方はもちろんできるが、ベスト8に名を連ねたブラジル、フランス、イングランドらと比べると日本は最終局面でのクオリティが明らかに不足していた。  

 例えば、枠内シュート数とクロスの成功本数は出場32か国の中でも後ろから数えたほうが早いデータが出ている。他国の試合を振り返ると、フランスは相手に守備をがっちり固められながらもエムバペ、グリーズマンなどの圧倒的な個人技で崩す、ブラジルは対戦国の予測を上回る連係で易々とシュートチャンスを作り出す、そしてイングランドも確度の高いポストプレー、ダイレクトプレー、速くて正確なクロスで仕留めており、そうした戦いぶりからはやはり精度が重要だということが分かるだろう。
 

 では、自己犠牲を示して120分間戦い抜いたクロアチア戦。フォア・ザ・チームの精神をピッチ上の選手たちが体現する中で、左サイドの高い位置でボールを持った時の長友は何ができたか。敵陣深く切り込んでのアバウトなクロスからは得点の匂いがせず、そのクオリティに日本の限界を感じた。  

 おそらくクロアチアは日本をだいぶスカウティングしており、長友のクオリティならあそこでボールを持たせてもオーケーという判断をしていたのではないか。そうでなければ、三笘投入後、日本の左サイドに対するクロアチアの警戒が高まった点が説明できない。クオリティという点では、途中出場の浅野も満足行くパフォーマンスを披露できなかった。後方からのボールを自分のところで収める回数が極端に少なく、その影響もあり日本は守備に回る時間帯が増えた。さらに、前半に鎌田がふかしたシュートも、せめて枠内に入れるべきだった。     

 世界を相手にしても日本はある程度守れる。それは今大会で示すことができた。あとはディフェンスの強度を落とさず、どうチャンスを作るか、その回数を増やすか、決定率を上げるか、そうしたところが今後の課題になるのではないか。

 確かにクロアチア戦のPKは運に左右された部分もある。しかし、技術的な問題(キックの質)があった事実も決して見逃せない。当たり前のことだが、サッカーにおいて精度は必要不可欠な要素、それをクロアチア戦では再認識させられた。

構成●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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