ベスト8が出揃ったカタール・ワールドカップ。4強入りをかけた熱きバトルに世界中のフットボールファンが注目している。本稿では、現地時間12月10日に行なわれる準々決勝のモロッコ対ポルトガルを展望する。

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 優勝候補のスペインとのPK戦を制したモロッコと、スイス相手に6-1の大勝を飾ったポルトガルの対戦は、ある意味、準々決勝で最も読みにくい。

 ワリド・レグラギ監督が率いるモロッコは、右サイドのハキム・ジイェフを起点に、70%を超えるスペインのポゼッションを裏返すカウンターを何度も繰り出して、いつゴールが決まってもおかしくない状況を作り出していた。一方のポルトガルは基本的にボールを握るスタイルだが、スペインほどのこだわりはなく、リスクマネジメントもしっかりしている。

 両チームともに4-1-2-3のシステムで、中盤では強度の高いバトルが繰り広げられるはず。キーマンは、モロッコがアゼディン・ウナヒ、ポルトガルはベルナルド・シウバだ。相手のプレッシャーをいなしながら、どちらが効果的なチャンスメイクをできるか。モロッコは右ウイングのジイェフもゲームメイクに関わるが、ポルトガルも同ポジションからブルーノ・フェルナンデスがインサイドに流れて来る。

 明らかなポゼッションとカウンターという関係になりにくいなかで、攻守のトランジションによる奪い合いになるかもしれない。その意味ではアンカー対決にも注目だ。モロッコのソフィアン・アムラバトと、ポルトガルのウィリアム・カルバリョは中盤のフィルターとしてチームを支えてきた。両チームともに右サイドからの攻撃を得意とするが、常に中央の隙は狙っているため、両選手が睨み合うような構図が予想される。
 
 9か国目のW杯制覇を目ざすポルトガルの不安要素は選手層だ。CBとアンカーのマルチロールであるダニーロ・ペレイラと、SBのヌーノ・メンデスが怪我ですでにチームを離脱した。CBはW杯4大会目となる39歳のペペが圧倒的な存在感を示しているが、過密日程の5試合目でもフル稼働できるのか。188センチのFWユーセフ・エン=ネシリを封じるキーマンでもあり、引き続き奮起が期待される。

 ポルトガルでは、クリスティアーノ・ロナウドに代わり、スイス戦でスタメン起用された21歳のゴンサロ・ラモスがハットトリックを達成した。フェルナンド・サントス監督が新旧のストライカーどちらをスタートから出し、どちらをジョーカーに回すのか。これまで入れ替わりでピッチに立っているが、勝負どころでは2トップで並び立つ可能性もある。

 モロッコはアルゼンチンに次いで現地で応援するサポーターが多く、スペイン戦もほぼ完全ホームのような雰囲気を生み出していた。特に延長戦、PK戦となればポルトガルにとっても圧力になってくるため、できれば90分で仕留めたいだろう。

 ただ、モロッコも流れからの得点力はもちろん、右SBのアシュラフ・ハキミとジイェフがセットプレーのキッカーとしても脅威になる。下馬表ではポルトガル有利も、勢いのあるモロッコに対してスリリングな戦いを強いられそうだ。

文●河治良幸

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