カタール・ワールドカップは、ついにベスト4が出揃った。ファイナル進出をかけた一戦、どんなバトルが繰り広げられるか。本稿では、準決勝のアルゼンチン対クロアチアを展望する。

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 日本とブラジルをPK戦で破って勝ち上がったクロアチアが挑むのは、過去に2度の優勝経験があるアルゼンチン。この南米の雄は、ディエゴ・マラドーナを擁した1986年のメキシコW杯から、9大会ぶりの世界制覇を目ざすとともに、リオネル・メッシというスーパースターの最後になるかもしれない大会での戴冠に向けて、チームがまとまっている様子だ。

 準々決勝のオランダ戦では、敵将ルイス・ファン・ハールの挑発的な発言にメッシら選手たちが怒りをあらわに。不穏な空気の中で行なわれたゲームでは、両チーム合わせて計18枚ものイエローカードが飛び出る乱戦となった。

 クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は、アルゼンチンをリスペクトしたうえで、しぶとく勝利をもぎ取るプランを練るだろう。

 クロアチアにとって心配なのは体力面だ。前回大会もノックアウトステージは全て延長戦およびPK戦を制してファイナルまで勝ち進んだ。しかし、今大会はより過密日程を消化してきている。その割にダリッチ監督はターンオーバー的な起用法はせず、37歳のルカ・モドリッチをはじめ、全ての試合でスタメンはほぼ固定されている。
 
 ただ、準々決勝のブラジル戦では途中出場のミスラフ・オルシッチ、ロブロ・マイェル、ブルーノ・ペトコビッチの活躍が起死回生の同点ゴールにつながった。おそらくアルゼンチン戦もスタメンは変わらず、勝負どころで交代カードを切ってくるはず。

 一方のアルゼンチンは、ここまでの5試合、全てにスタメン起用されている選手がメッシのほか、中盤のロドリゴ・デ・パウル、センターバックのニコラス・オタメンディ、GKのエミリアーノ・マルティネスの4人だ。

 グループステージまでリオネル・スカローニ監督は4-4-2を使ってきたが、ラウンド16のオーストラリア戦の後半から3バックにシフトチェンジし、オランダ戦もそのまま3バックで戦った。

 メッシとフリアン・アルバレスの2トップは変えていないが、延長戦でアンヘル・ディ・マリアを右サイドに投入する段階で、4-4-2にしている。ディ・マリアをスタメンで使うかベンチに置くかでも、システムや選手の配置に影響してくるかもしれない。

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 クロアチアは堅実なディフェンスをベースにしながら、攻撃はモドリッチを中心としたポゼッションと、左のイバン・ペリシッチなどを起点とした速攻を使い分ける。

 アルゼンチンは3バックの場合、アウトサイドのナウエル・モリーナとマルコス・アクーニャの攻撃参加がかなり重要なポイントになるが、やはりアルゼンチンの多くの攻撃はメッシが関わるので、クロアチアとしてはメッシに入ってくるボールが狙い目だ。

 メッシからは簡単にボールを奪えないが、マルセロ・ブロゾビッチやヨシュコ・グバルディオルが上手く引っ掛けることができれば、サイドの裏から一気にペリシッチなどがスペースを突く形から得点チャンスは広がる。そこの“表裏”が勝負のポイントになりそうだ。
 
 アルゼンチンの両サイドにも注目だが、クロアチアにはヨシップ・ユラノビッチという後方の“槍”がいる。ブラジル戦ではヴィニシウス・ジュニオールを止める役割がメインで、攻撃参加はやや限定的だったが、アルゼンチンはウイングを置かないため、浮いたポジションから攻め上がるチャンスはありそうだ。またアルゼンチンはオランダほど高さがないため、彼のロングスローも有効度がアップするだろう。

 アルゼンチンが前がかりなチームであるだけに、オープンな流れで両者に得点チャンスはあるはず。ただ、ともに中央の守備は固く、こじ開けるのに苦しめば延長戦、さらにはPK戦に勝負が持ち込まれる可能性も。

 クロアチアはドミニク・リバコビッチ、アルゼンチンはマルティネスという鉄壁のPKストッパーがいるだけに、壮絶なPK戦になるかもしれない。

文●河治良幸