今回のアルゼンチンはメッシだけではなかった

FIFAワールドカップ・カタール大会はアルゼンチンの優勝で幕を閉じた。同国がW杯のタイトルを獲得するのは、1986年以来のことである。

英『The Athletic』は優勝したアルゼンチンを「これまでの優勝チームの中で最も戦術的に柔軟なチームである」と評価している。

アルゼンチンは今大会で複数のシステムを採用している。初戦サウジアラビア戦では[4-4-2]、3試合目のポーランド戦は[4-3-3]だった。決勝トーナメントのオランダ戦では[5-3-2]を試したりしている。

複数のシステムを試すことで、多くの選手をピッチに立たせることができた。それで調子の良い、チームに合う選手を見つけ出す。フリアン・アルバレス、エンソ・フェルナンデス、アレクシス・マック・アリスターはサウジアラビア戦ベンチスタートだったが、その後チャンスを掴み、フランスとの決勝で先発の座を掴んでいる。

決勝のフランス戦でリオネル・スカローニ監督は攻撃的な[4-3-3]を採用した。これが当たった。序盤から主導権を握り、相手を押し込む。ボールを失ったとしても中盤でのボールの奪い合いで勝てるため、それほど問題なかった。ロドリゴ・デ・パウル、フェルナンデス、マックアリスターの守備面での強度は相当なものだった。

後半の半ばから、延長にかけては試合をコントロールしたとは言えないが、エミリアーノ・マルティネスを中心とした守備陣がフランスの攻撃を跳ね返す。キリアン・ムバッペに3ゴールを許してしまったが、ムバッペの躍動ぶりを考えると、3点で抑えたというべきか。

どうしても攻めるだけ、守るだけのチームでは戦い方の引き出しが足りず、どこかで隙を突かれることになる。ただアルゼンチンは攻撃、守備と二つの顔を持っており、それを武器にW杯を勝ち抜いた。

メッシを中心とするも頼りきりではないチームを作り上げたスカローニ監督。アルバレス、フェルナンデス、マックアリスターという若手がいたのもタイミングが良く、チームが成熟していった。フランスにけが人が戻ればまた話は変わるかも知れないが、現時点で最も強いナショナルチームとなった。