脇役の立場を受け入れられればポルトガルの戦力に
今回のFIFAワールドカップ・カタール大会でも37歳のクロアチア代表MFルカ・モドリッチ、35歳のアルゼンチン代表FWリオネル・メッシが活躍したように、近年はサッカー選手の選手寿命が延びている。30代に入ってからもトップパフォーマンスを継続する選手が増えており、それこそ30代後半でもワールドカップで活躍することが可能な時代だ。
しかし、コンディションさえ整えれば良いわけではない。やはり年齢を重ねるにつれてスピードが落ちるなど、身体能力の面では10代や20代の頃と差がついてくるものだ。キャリアを長く続けるには、怪我のケアとともにプレイスタイルやポジション、チームでの役割も柔軟に変えていく必要がある。
気になるのは、37歳を迎えているポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドだ。鉄人として有名なロナウドだが、マンチェスター・ユナイテッドへ復帰してからは苦しい時間が続いた。マンUではスタメンを外れる機会が増え、その際の態度も議論を呼んだ。最終的にはマンUとの契約が解除されることになり、現在はフリーだ。カタール大会でもポルトガル代表メンバーに入ったものの、満足な成績を残せぬままピッチを去っている。
若い頃と同じように得点量産とはいかずとも、今のロナウドも能力が完全に落ちたわけではない。相変わらず怪我も少なく、まだまだトップレベルでもプレイ出来るだろう。しかし、チームでの役割は変えていくべきタイミングだ。昔のように絶対的主役として振る舞うのは難しいだろう。
伊『Milannews.it』にて、イタリア人記者カルロス・パッセリーニ氏が比較したのは41歳のFWズラタン・イブラヒモビッチだ。今もミランでプレイするイブラヒモビッチもオレ様タイプな選手ではあったが、大ベテランになった今も怪我と戦いながらチームに貢献している。
その要因として、イブラヒモビッチが脇役も受け入れたところが大きいのではないか。フル出場する機会は減り、ベンチスタートなこともある。しかし不満を漏らすわけではなく、頼れるベテランストライカーとしてきっちり仕事をこなしている印象だ。若手の成長を助けたり、昔に比べるとかなり丸くなったとも言えるか。その変化についてパッセリーニ氏はこう指摘している。
「ロナウドが今後新しい自己認識を持てるかは分からない。彼は溢れんばかりのエゴを持っていて、時にそれは利己主義的でもある。イブラの方は変わった。10年前の彼はこんな風ではなかった。ミランを見ている人なら分かっている。チームメイトはこう言う。イブラはプレイせずとも、チームを勝利へ導くと」
イブラヒモビッチは大ベテランだが、一時スウェーデン代表復帰の話題も出ていた。それはイブラヒモビッチが脇役でも受け入れるプレイヤーに変わったからだろう。
ポルトガル代表でもロナウドがバックアッパーの役割を受け入れるのであれば、4年後の2026年大会を目指すことも不可能ではないだろう。豊富な経験を若手に伝える役割をこなしてくれれば、ポルトガル代表にとっては大きなプラスになる。
ロナウドはイブラヒモビッチと同じ道を辿れるのか。コンディション的には40代に入ってもプレイ出来るはずで、今求められているのはオレ様タイプからの脱却だ。