日本代表を率いる森保一監督の采配に大きな疑問を持ったのが、チュニジア代表に0−3で惨敗した6月14日のキリンカップサッカー決勝だ。
 
 計4試合が組まれた今回の6月シリーズは、あくまでも11月に迫るカタール・ワールドカップに向けたテストマッチであり、最大のプライオリティーは決して結果ではない。個々の選手や組み合わせ、戦術を試して、本番に向けて課題を洗い出したうえで不安要素を減らし、チームの総合力を高めること——。それが何よりも肝要だったはずだ。
 
 実際、森保監督も会見でことあるごとに「ワールドカップに向けてできるだけ多くの選手、組み合わせ、戦い方を試したい」と口にしていた。
 
 その言葉とはまさに裏腹だったのが、遠藤航の起用法だ。全4試合でアンカーとして先発で起用し、ブラジル戦(6月6日)とチュニジア戦ではフル出場させている。森保監督は遠藤のスタメンにこだわり続け、他にアンカーで試したのはパラグアイ戦(6月2日)の後半頭から板倉滉、ガーナ戦(6月10日)の69分から田中碧を途中出場させたのみ。こんな短時間の途中出場だけで、テストと呼べるのだろうか。
 
 日本代表が基本システムを4−2−3−1から4−3−3に変えたアジア最終予選4節のオーストラリア戦以降、遠藤は常にスタメンを張り、外れたのは消化試合だった最終節のベトナム戦のみ。その試合では代わりにアンカーを務めた柴崎岳が期待を裏切っただけに、この6月シリーズで改めて別のオプションを見定める必要があったはずだ。
 
 しかもチュニジア戦の遠藤は、さすがに疲労が溜まったか明らかに精彩を欠き、相手の素早い寄せに大苦戦。トラップやトランジションの瞬間を狙われて何度もボールロストし、強いプレッシャーがかかっていない状態でも単純なパスミスも連発した。
 
 フル稼働が祟って遠藤のパフォーマンスが大きく低下したのは、オーバーエイジとして参加した昨年の東京オリンピックと同じ流れ。森保監督はテストマッチにかかわらず、いわば同じ過ちを繰り返したわけだ。
 
 仮にこのままワールドカップ本大会に臨み、遠藤を怪我、コンデション不良、サスペンションなどで欠くか、すこぶるパフォーマンスが悪い事態に直面した時、森保監督の選択肢はベトナム戦で失敗した柴崎、現代表のアンカーでは途中出場の経験しかない板倉と田中だけ。考えるだけで、何とも頭の痛い問題だ。
 
 遠藤が森保ジャパンにとって絶対不可欠なのは間違いないものの、そんな重要な存在だからこそ、この6月シリーズで不測の事態に備えてしっかりと代役をテストすべきだった。極論で言えば、仮に結果が出ないとしても、「遠藤不在のチーム」を少なくとも1試合フルで経験すべきだったはずだ。
 
 7月のE-1選手権は国内組で臨む予定だけに、実質的に残る強化試合は9月の2試合、そして大会直前の1、2試合のみ。「後悔先に立たず」にならなければいいが……。
 
取材・文●白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

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