カタール・ワールドカップ(W杯)まで残り2カ月を切り、メンバー選考前の最後の2試合が終了した。

今回のドイツ遠征には30名が招集。初戦のアメリカ代表戦を終えた段階で、DF冨安健洋(アーセナル)がクラブ事情で離脱。またそのアメリカ戦で背中から落下し、前半のみのプレーでピッチを後にしていたGK権田修一(清水エスパルス)がケガで離脱した。

28名となった中、エクアドル代表と27日に対戦。結果はご存知の通り0-0のゴールレスドロー。日本は最後の2試合を1勝1分けで終えた。

森保一監督は、アメリカ戦、エクアドル戦でスタメンをそう入れ替えし、結果として30名中26名を起用。ピッチに立てなかったのは、GK川島永嗣(ストラスブール)、GK谷晃生(湘南ベルマーレ)、DF瀬古歩夢(グラスホッパー)、MF旗手怜央(セルティック)の4名となった。

瀬古に至っては2試合連続でベンチ外となり、旗手はエクアドル戦でベンチ入りも起用されないという状況。ともにクラブチームではレギュラーとしてプレーしているだけに、代表のピッチに立てなかったことは悔しさが残ったはずだ。

今回の2試合は[4-2-3-1]を採用し、森保監督が就任当初から最終予選の途中まで使っていたシステムで戦った。トップ下を明確に置くシステムにし、1トップとの距離を縮めること、そしてボランチを2枚にして守備の強度を保ちながら、中盤を支配して押し上げていく戦い方となった。

アメリカ戦では相手がボールを繋いできたこともあり、プレスがハマって攻撃に出る時間が長かった。一方のエクアドル戦は、相手が中央を固めたことでボールを縦に入れられず、サイドに展開した際にはすぐに寄せてボールを奪われるという状況に。相手のコンディション等もあるが、全く違った展開となる2試合だった。

今回の2試合で代表活動での選考は終了。あとはクラブチームでの残り期間の活躍や成長がメンバー入りを左右することになるが、改めてこのタイミングで26名を考えてみたい。

◆GKは3名、3人目をどういう位置付けにするかが問題

26名に今大会は枠が広がっているが、考え方は変わらないはず。GK3名に各ポジション2名、そこに同3名を加えるかだ。GKを4名にするという選択肢はまずないだろう。

まず、最終予選を通じてゴールを守り続けていたGK権田修一(清水エスパルス)は当確と言って良いだろう。クラブの結果が伴わないことはあるが、GK1人の責任とは言えない。また、今回はケガでの離脱となったが、重傷でなければ、間違いなく選ばれるはずだ。

そして2人目は、今回の2試合で見てもわかる通り、現段階ではGKシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)と見て良いだろう。突如の出番となったであろうアメリカ戦は危なげないプレーを見せると、エクアドル戦は何度も決定機を阻止。極め付きはPKセーブと、高いパフォーマンスを見せた。シント=トロイデンでも正守護神を務めており、あとはいかにチームを勝利に導いて本番を迎えられるか。1番手になるチャンスもゼロではない。

問題の3人目だ。精神的支柱という役割を求めるか、未来に繋げる若手の枠にするのか。この選択は監督の好みとチームの状態にもよるだろう。精神的支柱と考えれば、過去3大会守護神としてプレーしたGK川島永嗣(ストラスブール)だ。もちろん戦力としても考えられるが、その経験値は計り知れない。一方で、若手枠と考えれば、今回招集されていたGK谷晃生(湘南ベルマーレ)、GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)、GK鈴木彩艷(浦和レッズ)というところだろう。東京五輪を経験した3人だが、W杯という舞台を知っておくことは将来にも繋がる。森保監督の判断にもよるが、ベスト8以上を目指す戦いをすると考えると川島を選択するのではないかと見る。

◆最終ラインはSB&CB合計8名で決まりか、プラスするなら…

最終ラインだが、[4-1-4-1(4-3-3)]を採用しても[4-2-3-1]を採用しても4バックであり、オプションの3バックを採用した場合でも、招集人数に変化はないと見る。

特にユーティリティ性を確認できたことはプラスであり、多くの人数を連れていく可能性は限りなく低いだろう。各ポジション2名に加えて、ユーティリティさを生かしたいところだ。

右サイドバックはDF酒井宏樹(浦和レッズ)とDF山根視来(川崎フロンターレ)で間違いないだろう。何人かがこのポジションの候補に上がっていたが、この2人を超える選手は現れなかった。DF菅原由勢(AZ)やDF橋岡大樹(シント=トロイデン)も代表には招集されているが、前述の2人を超える存在にはなっていない。さらに、アメリカ戦でも試したが、DF冨安健洋(アーセナル)がクラブで右サイドバックを務めており、問題なくプレーできることがわかった。3枚目を用意する必要ないと言える。

そして左サイドバックだがDF長友佑都(FC東京)とDF中山雄太(ハダースフィールド・タウン)は確実と言って良いだろう。不要論も一時は囁かれた長友だが、エクアドル相手には好守を見せており、戦えることを証明した。中山もそつのないプレーを見せ、クラブではセンターバックとしてもプレーしているため、ユーティリティ性は持っている。

そしてセンターバックは、前述の冨安にDF吉田麻也(シャルケ)、DF谷口彰悟(川崎フロンターレ)は確定と言って良いだろう。吉田はスプリントで怪しい場面が見られることはあるが、キャプテンとしての振る舞い、そして要所での対応力は光るものがある。冨安は高さ、ビルドアップ能力、カバーリング、対人守備と全てを高い能力でこなし、左右の足で遜色なく蹴れることも重要。ビルドアップだけでなく、フィードでも攻撃の起点になることが期待される。谷口は、エクアドル戦のPKにつながるファウルの印象は悪いが、それ以外の部分ではカバーリングや予測など高いレベルで行っている。ファウルとなったのは世界との差であり、谷口にとって1番の課題でもある部分。この1年半で海外との差を徐々に埋めているだけに、エクアドル戦を反省してさらに上を目指してもらいたい。

そこで余った1枠だが、ケガの回復次第という見方が出てくる。順当に行けば、DF板倉滉(ボルシアMG)で間違いない。クラブでのパフォーマンスを見ても、センターバックでは最も良い動きを見せていたが、今回はケガで招集外。クラブはW杯まではプレーさせないということを明言しているだけに、回復するかどうかはギリギリということだろう。板倉が間に合わなければDF伊藤洋輝(シュツットガルト)になるだろう。代表歴は浅いものの、落ち着いたプレーを見せ、シュツットガルトでのパフォーマンスも高い。センターバックだけでなくサイドバックでもプレーでき、高さがあり、左利きということもプラス材料だ。板倉が間に合ってもプラス枠で呼ばれる可能性はありそうだ。

◆激戦の中盤、9月の2試合で明暗分かれる

中盤は非常に難しい人選になると言える。特にシステムがどうなるかによっても変わってくるが、基本的にはボランチに4枚、右サイドに2枚、左サイドに2枚、トップ下2枚という考えはまずあるはずだ。

ボランチだが、MF遠藤航(シュツットガルト)、MF守田英正(スポルティングCP)は当確と言える。アメリカ戦のパフォーマンスを見ても、世界と戦う強度を持つ2人は日本がベスト8に進みたければ欠かせない。そして、残り2枠はMF田中碧(デュッセルドルフ)とMF柴崎岳(レガネス)になるだろう。エクアドル戦でコンビを組んだ2人だが、良いパフォーマンスを出せたとは言い難い。特に相手が対応してきたことで難しい試合にはなったが、そこを攻撃面で打開することが求められていたはず。守備の強度は遠藤、守田に劣るだけに、攻撃面の貢献が見たかったが、そこは発揮できなかった。ただ、問題なく選ばれるだろう。

そして右サイドは日本をW杯に導いたと言っても良いMF伊東純也(スタッド・ランス)とMF堂安律(フライブルク)、左サイドはMF三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)とMF久保建英(レアル・ソシエダ)となるだろう。この4名はクラブでのパフォーマンス、代表でのパフォーマンスを加味すると順当な選出と言える。特に堂安と久保は今シーズンの移籍が今のところ正しいものとなっており、クラブでのパフォーマンスが上がっている。短期間での成長、覚醒も考えられるだけに、レギュラーポジション争いにわって入る活躍を残り2カ月で見たいところだ。

問題はトップ下。まずMF鎌田大地(フランクフルト)は確実だろう。フランクフルトでのプレーを見ても、鎌田を外す理由はない。[4-2-3-1]というシステムを機能させるという点でも、鎌田の存在は非常に重要となり、[4-1-4-1(4-3-3)]でも問題なくプレーが可能。適任と言えるだろう。そして、もう1人はMF南野拓実(モナコ)となると予想しておくが、今のパフォーマンスでは値しないと言っても良い。特にエクアドル戦のパフォーマンスは最低であり、コンディションが悪かったのか、ハードワークやサポートという点でも機能せず。モナコでも散見されるボールの持ち過ぎによるロストも最も多かった。この低調なパフォーマンスを続けるようでは、正直当落線上と言っても良いが、どこまで復調するかが気になる。

他の候補としてはMF原口元気(ウニオン・ベルリン)、MF旗手怜央(セルティック)が挙げられる。原口はチームがブンデスリーガ首位に立っている中、出場機会が減少。ただ、充実感はあるようで、トップ下、サイド、インサイドハーフ、ボランチとユーティリティ性は高い。特に献身性の部分では随一であり、W杯を戦う上では欲しい存在だ。そして、今回の活動で出番をもらえなかった旗手も気になる存在。セルティックでのパフォーマンスを見る限り、起用されなかった理由は不明と言える。ユーティリティ性も高く、調子も悪くないだけに、クラブでのアピール次第では逆転招集はあると予想する。

◆1トップを誰にするのか、調子?コンディション?実績?

そして問題の1トップ。今回は2名を選出したい。

アメリカ戦ではFW前田大然(セルティック)が先発し、FW町野修斗(湘南ベルマーレ)が途中出場。エクアドル戦ではFW古橋亨梧(セルティック)が先発し、FW上田綺世(セルクル・ブルージュ)が途中出場した。

この4人の中でインパクトを残したのは上田。エクアドル戦で難しい流れになっていたところ、後半から出場して起点となっていた。ゴールやアシストという特徴は出せなかった、この2試合を見れば一番好印象だった。

また、町野は世界との差を痛感しただろう。特に相手というよりも、日本代表というチームにはまだフィットしていない。EAFF E-1サッカー選手権では国内組の代表でプレーしたが、海外組だらけの中に入ると、準備や判断のスピードが足りていないことが明白だった。もちろん、今後の伸び代、今回の経験での飛躍的な成長も可能性があるが、現時点では厳しい。

一方で、セルティックの2人は難しい立ち回りを任されたとも言える。古橋に至っては、チーム全体で攻めあぐねていた中、見せ場をあまり作れず前半で交代となった。前田もスペースを使ったプレーはできず、不完全燃焼のまま交代したと言える。ただ、序列として高くないことの表れとも見れるかもしれない。

そこで気になるのはエースであるFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)とケガで離脱しているFW浅野拓磨(ボーフム)の状態。大迫は復帰していきなりチームを救う2ゴールの活躍と、ついに本来の輝きを取り戻した可能性がある。残り試合でいかにゴールを重ねてチームを残留に導けるかがポイントだろう。浅野はまずはケガの回復。本番には間に合うと森保監督は見解を示したが、コンディションがどこまで戻るのかも疑問だ。

順当に考えれば、大迫、そしてクラブで結果を残している古橋が選ばれ、上田が次点というところか。浅野次第でも様子は変わってくるだろう。

◆スターティングメンバーはどうなる?

ここまでGK3人、DF9人、MF10人、FW2人と24名を選出。残り2名となっているが、MFに原口、FWに上田というのが今の見立てだ。もちろん、ケガやこの先のパフォーマンス次第だが、現時点でという事になる。

この2人であればシステムにも対応が可能。原口はインサイドハーフができるために[4-1-4-1(4-3-3)]でプレーができ、上田はどんなシステムでもプレースタイルを合わせられる利点がある。

では、誰がスターティングメンバーになるのか。システムごとに予想してみる。

【4-2-3-1】
GK:権田修一
DF:冨安健洋、吉田麻也、板倉滉、長友佑都
MF:遠藤航、守田英正
MF:伊東純也、鎌田大地、久保建英
FW:大迫勇也

【4-1-4-1(4-3-3)】
GK:権田修一
DF:冨安健洋、吉田麻也、板倉滉、長友佑都
MF:鎌田大地、遠藤航、守田英正
FW:伊東純也、大迫勇也、久保建英

どちらのシステムも同じメンバーで並びを変えただけではあるが、この11名が現時点でのベストな11人だと予想する。

右サイドバックに冨安を配置しているが、板倉が回復して問題ないことが前提。難しい場合は、酒井を右サイドバックに置き、冨安はセンターバックで起用した方が良い。

酒井は今シーズンはケガでの離脱が増え、フル稼働することはなかなか難しい。冨安も昨季からケガに悩んでいたが、回復する時間をしっかりと取れていることが大きい。世界のアタッカーをクラブで体感していることはW杯の舞台で大きな力となるはずだ。

中盤の構成も、アメリカ代表戦のメンバーが中心となっており、鎌田をトップ下、左サイドは南野や三笘ではなく久保が適任と考える。三笘はやはり後半から相手の隙を突いていくことでより高いパフォーマンスを見せられるはず。久保は長い時間プレーさせた方が特徴を出せる選手だけに、久保が先発になると考える。

そして1トップは大迫の復活。苦しいシーズンを送ることになっているが、それも全てはW杯のため。神戸が苦しい中、この時期まで復帰を伸ばしたことは、先を万全に戦うことを見越してだと信じたい。残りの1カ月程度でゴール量産に期待したい。

いずれにしても、現時点での評価であり、この先の2カ月で変化することは大いにある。ただ、移籍をした選手も多い中でのこの2試合でのパフォーマンスは、明らかに差が出ていた部分もあった。本人がそれを残り2カ月でどうするのか。リーグ戦にも注目してみていく必要がある。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》