カタール・ワールドカップの初戦でドイツを破る大金星を挙げた翌日、森保一監督が囲み取材に応じた。
「このグループリーグを勝ち抜くには大きな勝点3だと思っていますが、シミュレーションをしても安心できる勝点3ではないと思います」と語った指揮官は、一喜一憂せず中3日で迎える次戦のコスタリカ戦(27日)へ目を向けた。
もっとも驚かされたのが、ドイツ撃破の切り札となった後半開始からのシステム3-4-2-1は、4日間続けた非公開練習で入念に練ってきたわけではないというのだ。
「練習のなかでは4バック中心でやっているので、3バックはやっていません。でも、親善試合のなかで、9月(の強化試合2試合)と(直前の)カナダ戦でやっていますし、試合前のミーティングでも示唆していました」
さらに3-4-2-1において、これまで一度も試したことのなかった右ウイングバックに伊東純也、左ウイングバックに三笘薫を入れる“超攻撃システム”は、ドイツ戦のために温めてきたのかという質問に対しても否定した。
「そういうことはありません。これまでの活動のなかで、(伊東)純也が右のウイングバックをやったことがありましたし、(三笘)薫は前所属(サンジ=ロワーズ)でウイングバックをやっていましたし、ブライトンでもそういうポジションをやっている。
純也と薫の話ではないですが、我々がこれまで積み上げてきた戦術であったり、選手個々の役割は、自チームでやってきたことを上手く組み合わせて、試合で出せるようにとこれまでもやってきました。ミーティングや練習でも伝えていますが、自分の良さを出せるようにと話しています」
その意味では後半頭からの3-4-2-1の採用、そして両ウイングバックに攻撃的な選手を入れる形は、指揮官は自信を持っていたのだろうが、客観的に見ればギャンブル的な要素もあったと言える。そして日本はその賭けに勝った。
一方で長友佑都は3-4-2-1に関してはミーティングや選手間でしっかり話し合って詰めてきたからこそ、後半頭からの採用に驚きはなかったと話す。
その言葉を聞けば、森保ジャパンの4年間の積み重ねとして相互理解を深めてきたからこそ柔軟にシステムチェンジに適応できたようにも映る。状況に合わせた臨機応変さや対応力を求めてきた指揮官の意志は、大一番で生きたのかもしれない。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト特派)
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