カタール・ワールドカップ(W杯)は現地12月14日、アル・バイト・スタジアムで準決勝の第2試合が行なわれ、1962年チリ大会のブラジル以来となる連覇を狙うフランスがモロッコを2-0と下し、決勝進出を果たした。18日の決勝では前日にクロアチアを3-0と破ったアルゼンチンと世界王座を懸けて対決。アフリカ大陸、アラブ世界の期待を担って快進撃を続けてきたモロッコは、17日の3位決定戦でクロアチアと対戦する。

 フランスでは、得点こそ奪えなかったものの、やはりエースのエムバペが存在感を見せた。T・エルナンデズが5分に挙げた先制点、79分のコロ・ミュアニの追加点とも、エムバペのシュート意識から生まれたものだ。ペナルティエリア内で思い切りよく狙い、チームメイトがそのこぼれ球をモノにした。そのほかにも、左サイドでぶっちぎりのドリブル突破、巧みなターンでマーカーを翻弄するなど、剛柔織り交ぜて千両役者ぶりを見せつけた。

 一方、決して目立ちはしないが、グリーズマンの頭脳的、献身的なプレーが攻守にチームを支えていたのが印象的だった。「早いうちに決まったので楽になった」(グリーズマン)先制点は、この背番号7がお膳立てした。グリーズマンはモロッコのセンターバックであるエル・ヤミクと左サイドバックのマズラウィの間のスペースを相手ゴールへの進入経路と考えていたふしがある。あるいは、前日に「(モロッコにとって)困難を生み出すことが我々の目標」と語っていたデシャン監督の意図だったかもしれない。

 この場面、ヴァランヌから縦パスが出ると、右ウイングのデンベレはタッチライン際に開く。それによってエル・ヤミクとマズラウィの間隔を広げ、そこをグリーズマンが後方から突くという攻略法。エル・ヤミクのインターセプト失敗もあって、グリーズマンはやすやすとペナルティエリアに入り込むことができた。さらには39分にも相手の注意が散漫になったこのスペースに走り込み、チャンスを作ってCKを獲得した。

 シンプルだが小気味良いパスで攻撃のリズムを作り出し、モロッコの時間帯ではキープ力を活かして相手の反則を誘う。それでプレーが止まり、まさにガス抜きのような具合にモロッコの波状攻撃を鎮める効果があった。また、中盤では的確な読みでピンチの芽を摘み、ゴールエリア内でも優れた危機察知能力を発揮。ヘディングでのクリアも含め、オールラウンドぶりを披露した。
 
 優勝した前回のロシア大会ではエムバペと並ぶ4得点で、得点王となったケイン(イングランド)に次ぐ2位タイ。準優勝した2016年のEUROでは、6点を決めて得点王に輝いた。今大会はまだ無得点だが、それを補って余りある獅子奮迅の働きを攻守で見せている。守備的MFのポグバ、カンテが負傷で参加を断念し、不安視されたフランスだが、決勝進出という成果はグリーズマンの幅広い動きと、インテリジェンス溢れるプレーに負うところが大きい。

 アルゼンチンとの決勝は、準決勝まで共に5ゴールを記録して得点王のタイトルも懸かるメッシとエムバペのエース対決が大きな見どころだろう。しかし、チームの攻撃のタクトを振るメッシとグリーズマンの頭脳戦にも注目したい。

取材・文●石川 聡

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