サッカーが成熟していない国、戦術面のアップデートが必要な国は外国籍監督が必要

 カタール・ワールドカップ(W杯)ですでに敗退した国では、代表監督の去就が報じられている。日本では、森保一監督の続投が有力視されているが、日本に敗れたドイツ代表はハンス・フリック監督の続投を発表。一方、スペイン代表はルイス・エンリケ監督が退任している。イングランド代表では、ガレス・サウスゲート監督の後継にドイツ人のトーマス・トゥヘル監督を招聘する声も挙がり始めている。

 イングランド在住のフランス人記者のハッペ・フレデリック氏は、外国籍監督が代表チームを率いることになる理由は、2つあると語る。

「1つは、サッカーが成熟していない国。そうした国では、代表チームを率いる人材を見つけるのが難しい。その場合、外国籍監督を招聘するのは筋が通っている。新たな指導者養成にもつなげられるからだ。その後、彼らはビッグクラブ、エリートクラブの指揮を執り、高いレベルのサッカーがどんなものかを理解することが必要になってくる。それから代表チームを率いることができるようになる。日本にも、似たことが起きているだろう」

 過去にW杯で優勝した国は、すべて自国の監督がチームを率いている。今回のカタールW杯でも、ベスト4に進出した全4チームが自国の監督だ。それでも外国籍監督を呼ぶのは、新興国だけではない。イングランドも2008年から12年までイタリア人のファビオ・カペッロ監督が就任している。

 こうしたケースについて、フレデリック記者は「外国籍監督は、違う視点をもたらすこともできる。イングランドは、ファビオ・カペッロ監督を招聘したが、当時のイングランド代表は、ロングボールをヘディングするという80年代のフットボールを実践していた。戦術面、戦略面、そしてチームがどう機能すればいいかという点において、アップデートが必要なことがある」と2つ目の理由を説明した。

イングランド特有の事情は「島国で情報が入ってこないことがある」

 イングランドが外国人監督を招聘するのには、特殊な理由があると考えているようだ。「特にイングランドは島国で情報が入ってこないことがある」と言い、現在のイングランドは、「ガレス・サウスゲート監督は、ドイツやフランスの若手育成からヒントを得ていると話していた。それによって、フィル・フォーデンやマーカス・ラッシュフォード、デクラン・ライスといった選手が育ってきた。監督は時々、国外からヒントを得て、新たなアイデアに触れ、自分たちの国に何が足りないかを考えているんだ」と、他国から学んでいると話した。

 今回のW杯で日本代表の戦いぶりも追っていたというフレデリック記者は、「この大会を見た限り、彼(森保監督)を退任させる理由は見当たらない。だが、私よりも日本のサッカーについてよく知っている人が何か問題点を感じていて、もっとチームを成長させることができ、ベターな状況にできる人がいるのであれば、交代する時なのかもしれないね」と語った。

「そこは私には分からないが、W杯で私が見た限りでは、彼は素晴らしい判断をしていた。いいプレーをして、途中出場した選手たちも機能し、戦術と戦略も良かった。そして結果も出ている。スペインの監督を追われたルイス・エンリケとは、状況が違うと思う。絶対に監督を代えなければいけない理由は、まったく見当たらない」

 世界最高峰の舞台で、ドイツ、スペインという強豪を破る結果を残し、日本サッカーのいい印象を残した森保監督は、2023年以降も日本代表を率いることとなるだろうか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)