年が変わっても、サッカーにオフはない。ワールドカップの熱が冷めないままに新年に入り、年明け早々にはJリーグのチームが始動する。日本代表の多数を占める海外組の選手たちは、シーズン真っただ中だ。2人の大ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生もスイッチオンのまま、サッカーの来し方行く末を語り尽くす。

■次のサッカーは見えたか

――リオネル・メッシは、アルゼンチン代表引退か続行かで注目を集め続けています。

大住「今のアルゼンチンに、メッシに代わる選手はいないよね。いや、世界中にいないか」

後藤「アルゼンチンの場合、アルフレッド・ディ・ステファノが出てきて、ディエゴ・マラドーナが出て、そうした系譜の先にメッシがいるんだから、3、40年経ったら誰か出てくるのかもしれないけど、そう簡単に代わりが務まる選手がいるわけがないよ。アルゼンチンはこれからまったく違うチームをつくらないといけないから、大変だね」

――ワールドカップが世界のサッカーの潮流をつくり出すこともありますが、今回はそういう新しい流れは見えましたか。

後藤「潮流はワールドカップじゃなくて、クラブサッカーがつくり出すんだよね。2010年大会で優勝したスペインのベースはバルセロナのサッカーだったし。ドイツ代表のゲーゲンプレッシングなどもそうだし、クラブサッカーがつくった流れに乗ってワールドカップが動くということが、ここ数十年続いている」

大住「そうだよね、2014年大会のドイツ代表だって、やはりバイエルン・ミュンヘンが中心のチームだったからね」

■毛色が違ったイングランド代表

――今の中心は、どのクラブになるのでしょうか。

大住「極端に言えば、UEFAチャンピオンズリーグかもしれない。あの大会でのしのぎ合いが、サッカーをどんどん厳しく、インテンシティの高いものにして、しかも選手のクオリティを本当に高めているよね。その変化が、ワールドカップにも如実に表れている。カタール大会で毛色が変わっていたのがイングランド代表だった。一番、クラブ的なサッカーをやっていたよね」

後藤「いわゆるポジショナルプレーみたいなことをやっていたよね。今のサッカー界で多い、前からプレッシングを仕掛けてカウンター、という流れに代わるとしたら、イングランド代表的なプレーになるような気はするよね」

大住「ああいうふうに11人が本当にうまく有機的に結びついて、攻撃も守備も展開していくというサッカーが、次のワールドカップでもっともっと主流になっているんじゃないかな」

後藤「イングランドはアルゼンチンのメッシやフランスのキリアン・ムバッペのようなすごい個人がいる、というわけではないからね。そういうプレーがこれからの主流になってほしいね」

■サッカーを変えた5人交代制

大住「それから、選手層が勝利に占めるウェイトも、すごく大きいと感じた。クロアチアも1試合だけならブラジルに勝つだけの試合をするけれど…という感じはするよね。アルゼンチンも、意外に選手層が厚かった。フランスも、あまり使われていなかった交代選手が最後には決勝で活躍して、試合を振り出しに戻したという面があったからね」

後藤「フランスはそもそも、カリム・ベンゼマやヌゴロ・カンテがいないとか、ケガ人だらけでやっていた。それでも、控えだった選手があれだけ活躍するんだから、層の厚さはすごいよ」

大住「完全に5人交代制に切り替わったことで、サッカーそのものが変わったよね」

後藤「そういう意味では、レベルはだいぶフランスより落ちるかもしれないけど、日本代表もケガ人があれだけいて、出られない選手がいるとか言いながらも、選手交代をうまく使って試合をひっくり返すだけの層の厚さがあったよね」