2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場を決めた今年3月の最終予選・オーストラリア戦。この大一番に先発していた浅野拓磨(ボーフム)と板倉滉(ボルシアMG)の2人が、膝を痛めるというショッキングなニュースが飛び込んできた。

 浅野は9月10日のシャルケ戦で右膝じん帯を断裂、板倉は同12日の練習時に左膝じん帯を部分断裂したという。どちらも手術をせず、保存療法で回復を目ざすというが、約2か月後に迫った本大会参戦への道は険しいと言うしかない。

 日本代表の負傷者は彼らだけではない。特に不安が大きいのはFW陣だ。ご存じの通り、最前線の絶対的主軸である大迫勇也(神戸)が今季試合に出たり出なかったりを繰り返していて、今月の23・27日の欧州2連戦(アメリカ戦・エクアドル戦)に参戦できるか微妙な情勢なのである。

 7月の新シーズン開幕から絶好調だった古橋亨梧(セルティック)にしても、3日にレンジャーズ戦で左肩を負傷。6日のチャンピオンズリーグ、レアル・マドリー戦で復帰したものの、万全の状態という保証はない。

 古橋の同僚・前田大然(セルティック)も昨季ほどのゴールラッシュを見せられておらず、欧州挑戦に踏み切ったばかりの上田綺世(サークル・ブルージュ)も壁にぶつかっている印象だ。

 となれば、森保一監督は本大会に向けてFW陣をどうするかを第一に考えていかなければならないだろう。

 欧州遠征では、まずは既存FWの状態をチェックすることが最初のテーマになってくる。上記の面々のうち誰が使えるのか、W杯本大会でフル稼働できるのかを見極めることが肝要だ。

 そのうえで、7月のE-1選手権で活躍した町野修斗(湘南)や欧州組のオナイウ阿道(トゥールーズ)、大ベテラン・岡崎慎司(シント=トロイデン)など本職のFWを招集するのも一案。

 実際、岡崎は8月中旬に新天地へ赴いてから全試合で先発出場中。コンディション自体は4年前のロシアW杯よりはるかに良い。2019年のコパアメリカで森保ジャパンに参戦した経験もあって、グループにもスムーズに適応できそうだ。
 
 一方で、所属クラブでFW起用されている伊東純也(スタッド・ランス)や久保建英(レアル・ソシエダ)、ゴールラッシュを見せている堂安律(フライブルク)らを最前線に抜擢するというアイディアもある。

 これに関しては、森保監督も「伊東と久保はFWの位置からサイドに出たり、中盤に下りたりといったプレーをしている。生かせるところは生かしたい」と前向きにコメントしている。

 ただ、彼らは1トップでボールを収められるタイプではないから、起用するとしたら2トップになるだろう。となれば、最終予選以降、ベースにしていた4-3-3はいったん横に置き、4-4-2、あるいは3-5-2への布陣変更が求められてくる。
 
 最近の欧州組の戦いを見ていると、伊東のスタッド・ランスを筆頭に、3バック(5バック)で戦っているチームが少なくない。遠藤航と伊藤洋輝のシュツットガルト、守田英正のスポルティング・リスボンは3枚が基本で、鎌田大地のフランクフルトや三笘薫のブライトン、冨安健洋のアーセナルも併用型だ。

 板倉、または酒井宏樹(浦和)が負傷離脱という守備陣の現状を踏まえても、今の日本代表は3バックのほうがベターなのかもしれない。

 過去の積み重ねを重視する傾向の強い森保監督だが、今回の欧州2連戦では思い切ったテストをするべきではないか。とにかく、選手個々の長所を一番引き出せる形や組み合わせを確認し、本番に向けての「最適解」を見出すことが最優先課題と言っていい。

 カタール前最後の代表ウィークということで、指揮官は今シリーズを30人体制で挑むと明言している。つまり、これまでのコアメンバー以外の抜擢も十分にあり得るということだ。
 
 W杯経験者の吉田麻也(シャルケ)や松井大輔(YS横浜)らが「ワールドカップはコンディションが全て」と強調している通り、短期決戦のW杯を戦い抜くためには、チームに新風を吹かせられる好調な人間を使うほうが得策。そういう視点で選手選考をしていくべきだ。

 いずれにせよ、この緊急事態を乗り越えて、ドイツとスペインという強敵が同居するグループを突破するためにも、日本代表には幅広い選択肢が必要。固定概念や序列に囚われることなく、大胆なチャレンジをしていくこと。それを森保監督には強く求めたい。

 まずは欧州遠征のメンバー発表の行方を冷静に見守りたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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