11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はBグループだ。

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■イングランド
(7大会連続16回目の出場)

 戦力的なポテンシャルを考えれば優勝も不可能ではないが、チームの組織力を考えると、有力候補とは言い難い。6月にはネーションズリーグでハンガリーに屈辱的な0-4の惨敗を喫して、国内外から酷評された。

 直近6試合で勝利なしという状況も気になるが、大会前に評判が良くてうまく行った事例があまりないのは、強豪国の例に漏れない。

 システムや選手の配置はおおよそ固まってきており、ハリー・マグワイア(マンチェスター・U)、エリック・ダイアー(トッテナム)、ジョン・ストーンズ(マンチェスター・C)の3バックは計算できる。

 1トップのファーストチョイスが、キャプテンのハリー・ケイン(トッテナム)になるのは間違いない。2列目はフィル・フォデン(マンチェスター・C)とラヒーム・スターリング(チェルシー)が有力であるものの、開幕1週間前に中断となるプレミアリーグでのパフォーマンスやその時の調子で序列の変化は起こりうる。

 攻守のインテンシティがカギを握るが、絶対的な守護神がいない正GK争いにも注目だ。
 
■アメリカ
(2大会ぶり11回目の出場)

 9月シリーズでは日本に0-2で完敗し、続くサウジアラビア戦はスコアレスドロー。先行き不安な内容と結果に終わった。

 やはり、右サイドの主力であるティモシー・ウェア(リール)の不在、さらに大黒柱であるクリスティアン・プリシック(チェルシー)が怪我の問題を抱えていたのは、少なからずチームのパフォーマンスに影響したと考えられる。ただし、あくまで本番は11月なので、専門チームがしっかりと分析して臨むはずだ。

 欧州組は開幕の1週間前までリーグ戦がある。MLSに所属する選手たちで下地を作ったうえで、欧州組がカタールに合流してから一気に仕上げる流れになりそうだ。

 4バックだが、インサイドハーフの選手が1人落ちて、変形型の3バックで攻撃を組み立てることが多い。相手のプレスのかけ方に応じた設計で、うまく繋ぎながら高い位置に起点を作る。攻守のトランジションもハイレベルだ。自国開催の4年後に大きな弾みとなる大会にしたい。
 
■ウェールズ
(16大会ぶり2回目の出場)

 欧州予選のプレーオフを勝ち抜いており、ガレス・ベイル(ロサンゼルスFC)というビッグネームはいるが、組織力に大きなアドバンテージを持つ。本番はアメリカ戦から始まるが、大一番は間違いなく兄弟国であるイングランドとの3試合目だ。

 3バックをベースとしながら、必要に応じて5バックで構えて、ミドルゾーンでのボール奪取から鋭いカウンターを繰り出す。

 攻守の要として奮闘するのは、ネコ・ウィリアムズ(ノッティンガム・F)だ。前線はベイルが1トップの場合と、2トップでダニエル・ジェームズ(フルアム)と組む場合などで、フィニッシュのところは変わってくるが、縦の速い攻撃がメインになる点に変わりはない。

 昨シーズンのチャンピオンシップ(イングランド2部)で15アシストを記録したハリー・ウィルソン(フルアム)の左からの正確なクロスにも注目だ。
 
■イラン
(3大会連続6回目の出場)

 予選後にカルロス・ケイロス監督が再任。前回W杯でイランを率いた後、コロンビアで途中解任の憂き目に遭い、エジプトでは予選でセネガルに敗れて本大会行きを逃した。それでも、過去2大会で指揮した名将が帰ってきたのはイランにとって朗報だ。

 9月の親善試合では、ウルグアイに1-0で勝利し、その試合で決勝点を記録したメフディ・タレミ(ポルト)は、ポルトガルリーグでゴールを量産中。さらにエースのサルダル・アズムン(レバークーゼン)やアリレザ・ジャハンバフシュ(フェイエノールト)など、アタッカー陣は好調だ。

 4-3-3の中盤の底は、大型MFサイード・エザトラヒ(ヴェイレ)が力強く支える。インサイドハーフは、FWも可能なサマン・ゴドス(ブレントフォード)とレフトバックも担える経験豊富な左利きのエフサン・ハジサフィ(AEKアテネ)か。90分出し切っていくチームだけに、選手層も大きなポイントになる。
 
【グループB展望】
 どの国にもグループ突破のチャンスが十分にある。もちろん本命はイングランドだが、直近のネーションズリーグを基準に見ても、盤石とは言い難いので、3か国に付け入る隙はある。

 イングランドはケイン、ウェールズはベイル、イランはアズムン、アメリカはプリシックという頼れるエースがおり、タイプは違うが、彼らの調子やパフォーマンスが直結してくる部分がありそうだ。ただ、チームの依存度が高いイングランドのケイン、ウェールズのベイルは特別な存在。彼らの調子が本大会の結果を左右するといっても過言ではない。
 
 接戦が続くと見られるB組だが、やはりクライマックスは3戦目だ。イングランドとウェールズ、イランとアメリカという政治・文化面から考えても因縁深いカードだが、サッカー面でみても興味深い。

 過去の対戦が100試合を超えるイングランドとウェールズだが、やはりイングランドが有利。初めて相まみえるW杯の舞台で、まさしくジャイアントキリングは起きるのか。イランとアメリカは戦術を越えて、意地のぶつかり合いのような試合になることは必至だ。

文●河治良幸

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