11月20日に幕を開けるカタール・ワールドカップ。4年に一度の大舞台では、どんな戦いが繰り広げられるか。本稿ではグループごとに出場国の横顔を紹介し、決勝トーナメント進出に向けた争いを展望する。今回はグループGだ。

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■ブラジル
(22大会連続22回目の出場)

 6度目の優勝を狙うための準備は整った。南米予選で圧倒的な強さを見せた「セレソン」は、チッチ監督のもと、かつてないほど組織的にもまとまっている。

 ネイマール(パリ・サンジェルマン)を筆頭に、リシャルリソン(トッテナム)、ルーカス・パケタ(リヨン)、ハフィーニャ(バルセロナ)、ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)とアタッカー陣は充実している。

 さらにカゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)を軸とする中盤、マルキーニョス(パリ・サンジェルマン)が統率するディフェンスライン、世界屈指の守護神アリソンと攻守に穴がない。良くも悪くもスロースターターの伝統があり、準備期間の短い今大会の入りが鍵になる。
 
■セルビア
(2大会連続13回目の出場)

“ピクシー”ことドラガン・ストイコビッチ監督が率いるチームは、予選で同居したポルトガルを上回る成績で、本大会にストレートインを果たした。

 奇遇にもブラジル、スイスは前回も同組で、どちらにも敗れている。しかし、当時よりタレント力は着実にアップしており、3-4-1-2をメインとしながら、4-3-3など複数システムを使い分けることができる。

 司令塔のMFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(ラツィオ)は主軸としての責任感が強まっているようだ。さらに変幻自在の左足を誇る10番ドゥシャン・タディッチ(アヤックス)、ボックス内で抜群の決定力を見せつけるドゥシャン・ヴラホビッチ(ユベントス)など、タレントの個性という意味ではブラジルに勝るとも劣らない。

 セットプレーの得点力も高く、チャンスの数で上回ることができそうなブラジル戦でも、勝利の鍵になりうる。
 
■スイス
(5大会連続12回目の出場)

 前回大会はブラジルに次ぐ2位でグループステージを突破した。司令塔グラニト・ジャカ(アーセナル)が中盤を仕切り、ジェルダン・シャキリ(シカゴ・ファイアー)がサイドから仕掛ける構図は4年半前と変わらないが、それをゴールに結びつけられるタレントが育ってきた。

 ブリール・エンボロ(モナコ)だ。抜群の身体能力を誇るストライカーは、スペイン、チェコに連勝した9月のネーションズリーグで連続得点を決めるなど、ようやくエースらしくなってきた。

 守護神ヤン・ゾマーがゴール前に構えるディフェンスは相変わらず安定しており、苦しい時間帯に粘り強く耐えることもできる。2試合目で激突するブラジルに理想的な勝ち方ができれば、ムラト・ヤキン監督が率いるチームが、半世紀以上前に到達したベスト8を超える躍進への足がかりになる。
 
■カメルーン
(2大会ぶり8回目の出場)

 3か国が前回と同じ組だが、唯一異なる「不屈のライオン」が台風の目になりうる。

 アフリカ予選では大陸最強のコートジボワールを二次予選で敗退に追い込み、三次予選でタレント集団のアルジェリアを撃破。今年3月にトニ・コンセイソン前監督から引き継いだ元代表DFのリゴベール・ソング監督は誰もが知るレジェンドであり、個性派たちをまとめるカリスマ性に溢れている。

 3-4-3、4-3-3、4-4-2と複数のシステムを試合ごとに変えており、本大会でどの形を選択するかは不明。ただ守護神アンドレ・オナナ(インテル)、指揮官の後継者たるニコラ・エヌクル(アリス・テッサロニキ)、中盤の軸となるアンドレ・アンギサ(ナポリ)、“Wエース”とも呼べるマキシム・シュポ=モティング(バイエルン)とヴァンサン・アブバカル(アル・ナスル)のセンターラインは強力だ。そこにサイドのチャンスメーカーであるカルル・トコ・エカンビ(リヨン)などが、いかに絡んで勝機に繋げるか。
 
【グループG展望】

 前回大会で同組だったブラジル、スイス、セルビアが再び、一堂に会するという、運命の悪戯としか言いようがない組分け。当時のもう1か国はコスタリカだったが、アフリカの雄カメルーンが入ったことで、どう影響するか。

 無論、3か国とも4年半でアップデートされており、総合的にはスケールアップしている。ブラジルは初戦でセルビアと戦うが、何しろ準備期間が短いので、手探りで入ったところで、セルビアに出端をくじかれるリスクはある。

 セルビアはセットプレーの得点力が抜群で、ブラジルが唯一苦手とするのがセットプレーの守備というのも興味深い構図だ。一方、スイスは組織力や全体としてのプレー強度は初戦の相手カメルーンを上回るが、明確な武器を持つカメルーンは危険なチームだ。大会直前には同じアフリカ勢のガーナと強化試合をして臨むが、良いシミュレーションになるかどうか。
 
 ブラジルとスイスは2試合目で当たる。前回大会では1-1だったが、チャンスの数はブラジルが大きく上回っていた。スイスは守護神ゾマーのビッグセーブに頼る部分が大きいだろうが、ブラジルはここでてこずると3試合目のカメルーン戦でも突破に向けてパワーを割くことになる。

 優勝候補の1つであるブラジルは、決勝までの7試合を考えれば、2連勝で3試合目はターンオーバーに持っていきたいところだろう。

文●河治良幸

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