ついに幕を開けたカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ドイツとの初戦は11月23日。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はFW南野拓実(モナコ)だ。

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「試合にしっかり出場して、最高のコンディションでワールドカップ(W杯)を迎えたい。かつレベルアップしなきゃいけないなとブラジル戦でも感じたので、そういう部分を踏まえて決断できたらいいと思います」

 今年の6月シリーズの際、去就についてこうコメントしていた南野拓実。「今年は勝負を賭ける」と公言した2021-22シーズンのリバプールで納得がいく結果を残せず、今夏の移籍を選んだ。

 だが、新天地モナコでも適応に苦しみ、周囲からも酷評されてしまう。それでも10月末からようやく復調。リーグ戦で先発が続き、11月6日のトゥールーズ戦ではブリール・エンボロの2点目をアシストしている。動きにもキレが出てきただけに、W杯本番でのブレイクが待たれるところだ。

 紆余曲折の続く南野だが、そもそも彼は森保ジャパンで最多の通算17ゴールを奪っている点取り屋。アルベルト・ザッケローニ監督時代に19歳で代表候補に呼ばれ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代の2015年にも、短時間だが2試合で起用されながら代表定着が叶わなかった男にとって、森保体制での主力抜擢は念願が叶った形だったに違いない。
 
 18年9月のコスタリカ戦からトップ下で起用されると、2018年は4得点、2019年は7得点。特に2次予選では4戦連続弾と、日本の得点源として絶大な存在感を示した。

 同時期に、ザルツブルクでのチャンピオンズリーグでの活躍が認められ、リバプールへ飛躍。名実ともにトッププレーヤーと認められたところまでは良かったが、最高峰クラブで想像以上の壁にぶつかる。

 そして代表でも鎌田大地(フランクフルト)の台頭で、南野は左サイドでの起用が多くなる。2021年後半戦のサウサンプトンでのプレーを見て、森保一監督はそう判断したのだろうが、ゴールからの距離が遠くなった分、守備の負担が増え、得点のチャンスが減るという悪循環に陥ってしまった。
 
 それでも代表では試合に出続け、2021年9月からスタートした最終予選にもコンスタントに出場。けれども、日本が序盤3戦2敗の崖っぷちに立たされ、10月のオーストラリア戦から4-3-3の布陣にシフトすると、南野が孤立する場面が増え、ますます得点から遠ざかってしまう。

 縦関係の長友佑都(FC東京)と深刻そうに話し込む姿も見られ、「左だとゴールへの迫力が出せない」と本人も苦悩していた。

 さらに、11月のオマーン戦で鮮烈なデビューを飾った三笘薫(ブライトン)がインパクトを残すと、「三笘を使うべき」という声が急上昇。立場が厳しくなっていく。その後の鎌田のブレイクもあり、今年の9月シリーズでは控え組のトップ下としてエクアドル戦に出るに至ったのである。

 とはいえ、本番で南野がサブに甘んじると決まったわけではない。9月のアメリカ戦で、左サイドで出た久保建英(R・ソシエダ)の状態が不透明で、ドイツやスペインの強度に耐えられるか未知数だからだ。
 
 三笘や相馬勇紀(名古屋)もいるが、やはり守備力を考えると、南野という選択肢がないとは言い切れない。トップ下の鎌田と並べば、お互いがポジションを入れ替えながらゴールに迫ることも可能。まだまだ南野にはチャンスがあるのだ。

 4年前のロシアW杯直前では、「10番」を背負う香川真司(シント=トロイデン)が怪我から復活。本番で本領を発揮した。「拓実には頑張ってほしい」と、その先輩もエールを送る。

“新10番”南野は逆襲を果たせるのか。期待を込めて動向を見守りたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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