クロアチア戦に勝てば過去最高のベスト8進出

 日本代表はカタール・ワールドカップ(W杯)でスペイン代表、ドイツ代表という優勝経験のある2か国と同居したグループEを首位で通過し、決勝トーナメントに進出した。世界を驚かせる結果を残し、現地ではすでに「日本にとって過去最高のW杯」と言われているが、印象だけでなく、しっかりと過去最高の大会にする必要がある。

 そのために越えなければいけないのが、過去3度、打ち破れなかったラウンド16の壁となる。カタールW杯のラウンド16で、日本はクロアチア代表と対戦する。クロアチアは前回大会の準優勝チームであり、2018年のバロンドール受賞者であるMFルカ・モドリッチらを擁する強豪だ。日本は過去に1998年のフランスW杯、2006年のドイツW杯でもクロアチアと対戦しているが、0-1、0-0といずれも勝つことができていない。

 W杯におけるクロアチア戦の初勝利が、初のベスト8進出という目標達成に直結するが、日本代表はどのようなメンバーで、この試合に臨むべきだろうか。

 まずGKは、グループリーグの全3試合をフル出場したGK権田修一(清水エスパルス)だろう。ポジションを争うGKシュミット・ダニエルも、3日の練習後に「準備はしているが、こういう大会の途中でGKが変わる例はあまりない」と話しており、アクシデントがない限り、グループリーグでチームを救うセーブを見せてきた権田を代えるのは得策ではない。

 スペイン戦の翌日に森保一監督は「次の試合に4バックにするか、3バックにするか、ちょうど考えていたところ」と話していたが、3-4-2-1でいくのか、4-2-3-1でいくのかも大きなポイントになる。そして「目の前の対戦相手だけでなく、これまでの流れも含めて、総合的に判断したい」と語った。

 クロアチアは今大会、4-3-3を基本布陣に戦っているため、日本も4バックに戻す可能性はある。だが、“流れ”を重視するのであれば、やはり3-4-2-1だろう。グループステージの全3試合にフル出場したDF板倉滉(ボルシアMG)の出場停止は痛恨だが、幸いにもDF冨安健洋(アーセナル)が、90分プレーできる状態になったと話しているため、3センターバックは冨安、DF吉田麻也(シャルケ)、そしてスペイン戦で見事なW杯デビューを飾ったDF谷口彰悟(川崎フロンターレ)で臨める。

 モドリッチに加え、MFマテオ・コバチッチ、MFマルセロ・ブロゾビッチというスターが並ぶクロアチアの中盤は、世界屈指の豪華さだ。日本はダブルボランチに、スペイン戦の終盤に出場したMF遠藤航(シュツットガルト)とMF守田英正(スポルティング)、右ウイングバックにスペイン戦に続きMF伊東純也(スタッド・ランス)、左ウイングバックにDF長友佑都(FC東京)を配置し、中盤の主導権争いに挑むことになるだろう。

 そして2シャドーだが、3日の練習を体調不良で欠場したMF久保建英(レアル・ソシエダ)の回復状況が読めないため、途中出場で2ゴールを挙げているMF堂安律(フライブルク)、そしてMF鎌田大地(フランクフルト)が本調子ではないため、ここはハードワークできるMF南野拓実(ASモナコ)を起用する。勝負に出る後半に、MF三笘薫(ブライトン)らと鎌田を起用する狙いだ。最後に1トップは、スペイン戦でも鬼のプレスで相手の守備陣を混乱に陥れたFW前田大然(セルティック)を配置する。

 スペインとドイツに勝利したことで、「クロアチアならいけるのではないか」と考える人もいるかもしれない。だが、クロアチアは初出場の1998年フランスW杯で3位になっているだけでなく、前回大会でも準優勝という成績を収めている。FIFAランキングでも日本の24位に対して、12位と日本より格上の相手だ。スペインやドイツのように、ボールポゼッションを重視するわけではなく、守備を固めて戦うこともできるため、コスタリカ代表の堅守に手こずった日本にとっては、ある意味、より難しい相手かもしれない。

 それでも決勝トーナメントは、こういう格上との試合が当たり前。2018年大会で、あと少しのところまで迫った「まだ見ぬ景色」を見るために、森保監督はどんなメンバーを送り出すだろうか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)