[キリンチャレンジカップ]日本2-0アメリカ/9月23日/デュッセルドルフ・アレーナ
アメリカ戦は「良い守備から良い攻撃」というコンセプトが、そのまま発揮された試合だった。
鎌田大地をトップ下に置く4-2-3-1の狙いは攻守両面であったと考えられるが、アメリカに対して守備の狙いが明確だったことで、基本的にコンパクトなミドルブロックを引いたところから、機を見たプレッシングで高い位置のボール奪取、そのままショートカウンターにつなげるシーンが多く見られた。
25分の鎌田の先制点も、まさに高い位置でボールを奪ってのショートカウンターだった。守田英正とのプレッシャーで伊東純也がカットしたところから、守田を経由して、左でフリーになった鎌田に繋がった。
一度はオフサイドの判定となったが、相手ディフェンスより前に出ていた前田大然はプレーに直接関与しておらず、守田からパスを受けた鎌田もギリギリでオンサイドだったことで、ゴールが認められた。
このシーンでも奪った場所は伊東と守田のところだが、前田のスプリントに加えて、ボランチの遠藤航と、左サイドで起用された久保建英が逆サイドの選択肢を規制していたことも見逃せない。
基本的にアメリカは4-3-3で、左右のサイドバックが高い位置を取ろうとするので、前田と鎌田でセンターバック2枚と、アンカーのタイラー・アダムスをチェック。右の伊東は左サイドバックのサム・バインズ、左の久保は右サイドバックのセルジーノ・デストを見ながら、反対サイドにボールがある時はインサイドハーフの選手も見ることで、遠藤と守田がボールサイドにプレッシャーをかけることができる。
もちろん、アメリカも完全な固定システムではないので、インサイドハーフの1人が下がって3枚になるような状況では、少し崩して久保か伊東のどちらかがワイドに開いたセンターバックに行って、サイドバックは後ろの酒井宏樹や中山雄太が預かるようなメカニズムが機能していた。遠藤は振り返る。
「前半もどっちかと言うと3バック、ディフェンダーというよりもインサイドハーフだったり、アンカーの選手がちょっと落ちて3枚気味に作った時に、タケだったり純也がそこに対して行くと。2トップだとなかなかそこは追い切れないし、そこでハマらない、みたいなのがあるけど、タイミング良く、うまく純也だったりタケが相手の3バックに対して行くってところはチームとして持っていた」
大きな枠組みはミーティングを通じて森保一監督からも提示されていたようだ。攻守に活躍が目立った鎌田も「戦術練習からミーティング、相手がどう来るから自分たちはどうするという明確なやり方があったし、選手自身がそれをちゃんと理解して、チームとして動けていたと思う」と言う。
アメリカと、カタール・ワールドカップのグループステージで対戦する3チーム(ドイツ、コスタリカ、スペイン)は具体的な特長も異なるが、目の前の相手に対して、どうシミュレーションして臨むかというプランニングがあり、相手が変えてきた場合も含めてコミュニケーションが取れていたのだろう。そうしたことを踏まえて、遠藤にW杯の本番仕様になって来ているのかを聞いた。
「それはありますね。そんなに大きく変わってはないですけど、チュニジア戦(0-3)の反省というか、6月の活動が個人的にはすごく大きかったのかなと。ああやってうまくいかなかったっていうのがやっぱりあって、その現象に対して、どうするのという危機感を選手たちが持ちながら、今回の合宿に臨めている」
もちろん、チーム全体として戦術や役割の共有は全体ミーティングで行なわれるが、守田はユニット間でも、かなり個別のコミュニケーションが取られていたことを明かす。
「僕は左サイドだったので、建英とか雄太と話しました」という守田は、「守備のところは結構、前日も深く話しましたし、だから今日、そこまで押し込まれる展開もなくて、相手にボールを持たれる時間帯は多かったかもしれないですけど、怖さはなかったし、奪った後にチャンスに繋げられた」と語る。
そうしたところから後半、アメリカが明確な3バックに変更した状況でも、日本は一旦ハイプレスを自重しながら相手の様子を見て、改めて誰がどこに行くべきかを素早く確認。吉田麻也が前に出たところの裏返しから危ないミドルシュートを打たれた以外、ほとんどピンチらしいピンチは無かった。
そして終了間際の86分に原口元気を入れて、相手と鏡の3-4-2-1にして試合をクローズするなど、やりたいことがかなり出せての完勝というのは、現段階で高評価に値する。
もちろん、90分を細かく見れば攻守に課題はあったし、本大会でドイツやスペインが相手になれば、こうはいかない。W杯出場国のアメリカにしても、4年後の自国開催を見据えて、総勢50人のスタッフでドイツに来ているという。主力数人の怪我を抱えた状況で、この結果と内容を分析して、本大会に生かして行くはずだ。
日本は欧州組のコンディションが良かったというシンプルな理由もあるかもしれないし、直前に監督解任があった前回大会に比べて、非常に順調なことが逆に不安をよぎらせる部分もある。
それでも“ガラガラポン”ではなく、継続性を持ってロジカルに準備を進めることが本大会での勝率を上げ、積み上げの検証にも繋がるのは確か。その意味では、有意義なテストマッチになったことは間違いない。
アメリカ戦で内容も結果もポジティブだったことを受けて、森保監督が27日のエクアドル戦でどういったシステム選択、選手起用をしていくか気になるが、まずはアメリカ戦に出られなかった選手たちのモチベーションやコンディションを練習でチェックしておきたい。
取材・文●河治良幸
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